税理士法人ブラザシップ・株式会社ブラザシップコンサルティング様は愛知県・東京都で会計事務所業務とコンサルティング業務を展開されています。
2009年に代表の加藤先生が愛知県小牧市で職員1人の状態から開業され、現在は3拠点・30人規模の法人へと急成長されています。
監査担当者全員がMASに取り組んでおられ、高品質な税務とMASを提供し、現在では資本政策やM&Aなど高い専門性が必要とされるサービスも手掛けておられます。
インターフェイス主催の全国大会でも指導成果部門・営業成果部門の両方で最優秀賞を獲得されるなど、ハイレベルなサービスと拡大はどのようにして実現できたのか、代表社員の加藤先生にお話を伺いました。
背景
事務所の経営方針を模索している中、MASに出会った
2008年に税理士である父が他界し、急遽事務所を引き継ぐことになりました。急逝だったため、短い時間しか共に仕事が出来ませんでしたが、「税理士とは、経営者にとって一番身近な相談役だ。
どんなことでも、とことん親身に応えなければならない。」という教えを引き継ぐと強く心に誓いました。
二年間は業務の効率化や管理体制の整備を行いながら、私自身は中小企業の経営支援に必要な知識習得に努めました。
二年の間に可能な限り他の事務所へ見学に行く、ノウハウを得るための研修に参加する、シミュレーションソフトを導入するということを行いました。その中でMASという業務があることを知りました。
MASに取組んではみたものの思ったような結果が出なかった
税務の拡大に関しては学んだ知識とノウハウで、ある程度順調にいっていました。ですので、経営支援業務も経営を学び、必要なツールを整えて実行に移せば必ず成果が出せると思っていました。ところが、同じようには行かないのです。
経営戦略やマーケティングの勉強をし、それを顧問先に教え、財務の専門知識を駆使して綺麗な資料を作って説明をし、環境分析から戦略のアドバイスをする等々をやっていました。
そういったサービスは、お客さんには喜んでは頂けました。しかし、別途料金を支払ってまではやろうと言ってくれません。
価値あるサービスであれば、それに見合う対価は頂く必要があると私は考えています。そうしなければ単に事務所の負担が増えるだけで、とてもそれを広げていくことは出来ません。
高い顧問料が欲しいのではなく、経営支援を世の中に広めたいというのが私の思いなのです。何とかMASを「事業化」できないかと模索する日々でした。
インターフェイスのMASノウハウを採用した理由
「実践してきた」手法を学べば成果創出が出来ると考えた
MASを「事業化する」支援をしているということで、ものは試しとセミナーに参加してみました。せっかく足を運んだので、疑問に思っていることを質問してみました。私がやってきたことを話し、「MASとはそのような支援ではないのか?」と聞いてみたのです。
返ってきた答えは、「それでは有償化は難しい、顧客の成果を出すのも難しい」ということでした。その時は詳しい説明はありませんでしたが、何が違うかが分かるということは、成果を出す方法を知っているということだと直感しました。
実際に成果を出している事務所があり、自社も会計事務所からスタートして、コンサルタント会社としてやってきたとのことでしたので、MASを事業化する方法があるのではと感じ、講座への参加を決めました。
取り組んで分かったこと
アプローチ方法を変えることで反応が変わった
参加する前は、「凄い資料を作らないといけない、難しい事を知っていて、それを社長に教えなければならない」と考えていました。しかし、講座で一番始めに言われたことは、「財務分析を行う事」と「ヒアリングを行う事」でした。そんな事で良いのか?と思いましたが、自分で色々やり尽くした後でしたので、とにかく言われた通りにやってみました。
やってみて分かったのですが、ヒアリングを行うと経営者の問題意識などを掘り出し、整理させる事ができます。そうすると、社長は勝手に気づくのです。自分で気づくのですが、気づかせてくれたと思ってくれるのです。
もちろん、そのためには良い質問が必要ですので、経営に関する知識が必要ですし、その業種の経営上のポイントも事前に知っておく必要があります。それを生かして、社長に気付いてもらいたいなと思うことを意識しながら質問をします。
もちろん本当に分からないから聞くという事も多々あります。そうして出てきた答えを整理して、「社長が問題と感じているのはこういうことですね?」と確認を取るのです。
詳細な資料の説明や経営の知識を教えなくとも、聞くだけで満足を得られたのです。
商品説明やお願いではない、「提案」の方法が明確になった
MAS講座で学ぶ前は、「中期経営計画を立てませんか?」「予実管理をやりませんか?」など、商品説明を行って、売込む営業でした。
顧問先の場合は税理士ということもあり、先方も気を使って話を聞いてくれます。しかし、商品説明は出来るのですが、なかなか実際にやるところまでは行きつきません。先生が勧めるならという事で契約に至る先もありますが、単発で終わってしまいます。
新規の場合は関係性が出来ていませんので、中期経営計画という「商品」が「要る・要らない」で判断され、残念ながら多くの社長から「今は結構です」と断られます。
一方、しっかりと社長のありたい姿や問題意識を「聴く」ことから始めると、共通の問題意識を持つことが出来ます。単なる商品説明や、「○○が問題ですね、こうした方が良いですよと」いう一方的な問題指摘ではなくなるのです。
社長と同じ問題意識をもつわけですから、それを解消するための方法を提示させて欲しいと伝えると、「ぜひ聞きたい」と社長は思ってくれます。
しかし、この段階ではあくまでヒアリングからの情報ですので、社長の感じる問題点は本当に経営上優先度が高いことなのかはまだ分かりません。
ですから、財務分析を行って、優先度が高いテーマは何かを見つけ、それがヒアリングで顕在化した問題点と合致するのかを考察する必要があるのです。
そのことを伝えると、財務分析結果と併せて提案に伺う「提案アポイント」が獲得できます。新規の場合は、このヒアリングによって最重要情報である「財務データ」の入手ができます。
財務分析や経営計画は「手段」だと気づいた
MASとは社長や組織に気づきを与え、実行の支援を行う事だということに気付かされました。財務分析や経営計画の策定、会議支援などが商品なのではなく、それは手段なのです。
これはシンプルですが、大きな発想の転換だと思います。提供する価値は企業の業績が改善し、成長経営を実現するためのマネジメント手法を提供し、実践できるようにすることです。
「考え方」と「やり方」の両方が必要
MASの本質に自力で気付くのはなかなか難しいと思います。また、気付いたとしても、それをどの様にマーケティングやサービスモデルに組み込むかという具体的な「やり方」にたどりつくまでには多大な時間を要するでしょう。
「考え方」と「やり方」、この両方が揃わないと、本当に成果を出せるMASを事業化するのは難しいと思います。例えば、ヒアリングをやって、財務分析を行って、提案書を書いて、業務設計を行って・・・というのは実は知っていないと出来ないことだと思うのです。
それが分かったので、財務を軸とした経営管理のアドバイスによって経営支援を行うというサービスが確立してきましたし、マーケティングの方法も固まってきました。
取り組んだ成果
MASの受注方法が明確になった
取組み始めてすぐに7社のMAS受注が出来ました。提案からの受注確率は8割です。金融機関やお客様からの紹介、セミナーの定期開催など、見込み客発掘の方法からクロージングまでが明確になったことで、受注に関する不安がなくなりました。
もちろん、それが確立するまでは試行錯誤を繰り返していますが、他事務所の事例やインターフェイスのアドバイスも受けながらでしたので、自社のみで取り組むよりも短い期間で実現できたと思います。
指導成果創出に自信が持てた
経営計画やモニタリング会議など、先に「やる事」を考えるのではなく、企業の課題は何で、それをどのようなマネジメント手法を用いて実践するか?を考えるようになったことで本当に必要な支援が出来るようになりました。
また、先に財務分析を行いますので、どこから着手すべきが明確になります。改善すべきポイントが分かり、必要なフレームワークやツールがありますので、絶対に成果が出せるという自信が持てるようになりました。
実際に顧客都合によって支援が進まない場合を除き、程度の差はあれ100%経営改善を実現しています。
組織的に取組めるようになった
まず自分が実践し、それをそのまま職員にもやってもらいました。当社は全監査担当者がMASに取組んでいます。紆余曲折ありましたが、教育やレビューの体制が整い、営業・指導両面において成果を出せる職員が育ってきています。
感覚ではなく、MASを体系的に整理し、教育するための方法が確立してきたためです。
また、採用に関してもかなり力を入れて取り組み、どのような人材を採用すればいいのかが分かってきました。現在は管理者も育ってきており、「組織として」MASに取組めるようになっています。
自社の成長に確信が持てた
MASを実践すると、自社についてもより深く考えるようになりますし、課題設定や戦略立案もシャープになります。
過去5年間で、当社は売上高が3倍以上になっており、人員も増え、拠点は3か所となりました。理念を同じくするパートナーに恵まれ、優秀なスタッフも育ってきました。
MASの事業化に取り組んでいなければ、途中で迷走したり方針転換をしたりしたかもしれません。そうでなくとも、このスピード感で成長することは難しかったのではないかと思います。理念とビジョンを明確にし、それを達成するための戦略と具体的なアクションプランを描き、「定期的に検証し、ブラッシュアップする」というMASで指導していることをそのまま自社でも取り組んでいます。
これは経営レベルの意思決定を行う「パートナー会議」から「朝礼」に至るまで、仕組みとして定着しています。ですから、自社の将来像とそこに至るプロセスをはっきりとイメージすることができます。今後5年間でさらに売上高を3倍にする予定です。
MASの事業化に大切なこと
企業のことを真剣に考えること
指導成果なくしてMASの成功はありえないと思います。MASの場合、税務と異なり不要だと思われたら即解約につながります。その状態が続くと、常に見込み客発掘に追われ、紹介も生まれず、マーケティングコストをかけ続けなければなりません。
また、本当に価値を感じていなければ提案をする職員も疲弊します。
企業のことを真剣に考えると、やるべきことが見えてきます。やるべきことが見えたら手法を研究します。それを繰り返していくと、結果として指導力もついてきます。
最近は同業者の方からアドバイスを求められることも増えてきましたが、「MASがマンネリ化する」「本当に成果が出せるか分からない」というお悩みを聞きます。自分がその会社の経営者だったらそんな事は考えないのではないでしょうか。何が何でも成果を出す、そのためにはどうしたらよいかという視点になるはずです。
その会社をどうするかという事を社長と一緒に真剣に考える事そのものがMASの価値だと思います。
成功事例に学び、まずは基本をやってみること
MASに限ったことではありませんが、上手くいっているやり方をまずはそのままやってみることが大切だと思います。世の中には素晴らしいノウハウが沢山ありますが、一部を取り入れたり、効果検証が出来る前に独自のやり方を行ったりすることで成果が遠のくケースを目にします。私も最初は言われた事をそのままやってみました。
それで一定の成果が出ることを確かめた後に独自の工夫を行いました。これは社内での教育も同様です。
例えば、ヒアリングを行い、財務分析を行い、提案書を作成し、業務設計を行うというプロセスは徹底して守ってもらいます。それをマスターしたらより成果を出すための改善アイデアにチャレンジすることは歓迎します。
インターフェイスの会では、他の先生方の成功事例を学び、私も成功事例やノウハウを提供しています。
また、研修や個別相談では「基本のやり方」でやれているかを確認できます。単独でやるよりも遥かに速い速度で事業化が進むと思います。
経営理念を明確にし、浸透する事
MASの実践は実力が付くまでは大変です。
一方、続ければスキルは飛躍的に高まります。大変なので「頑張る理由」や「共感」がないと続きません。私たちは中小企業を良くするためにMASをやっています。多くの会計事務所様もそうだと思います。
ところが実力が付くと提案すれば高確率で色々なサービスが受注できるようになるため、業績のみを追いかけるなら、不要であったり、悪影響を与えたりするものであっても「売れて」しまいます。
これでは本来の目的から外れてしまいます。
ですから「何のために」という経営理念が非常に重要なのです。MASを事業化し、組織が大きくなってくるとなおさらです。ですので、当社では経営理念を浸透させるために、様々な工夫をしています。
例えば、経営理念に書いてあることをどう解釈するのか?具体的にはどのような行動をすればよいのか?を考えてもらいます。
行動指針は示してありますが、自分で考えてみることによって理解が進みます。私やパートナーの松原はもちろんですが、管理者が部下に接する際も経営理念に基づいて指導をしてくれています。
今後の取り組み
経営理念の実現に向けて邁進する
私たちの経営理念は「全職員の物心両面の幸福を追求し、社会に貢献する」です。
これをさらにかみ砕いて「中小企業の経営に安心と感動を与える!そして、中小企業を活性化する!という事業ミッションと、「働く人が激しい自己成長を実感し仕事が面白いと本気で思える事務所」という人事理念を掲げています。
これらを実現するために不可欠なのがMASへの取り組みだと考えています。
ですから、戦略の中核に据えていますし、「全員がMASをやる」ことに拘りを持っています。もちろん税務は不可欠だと考えていますので、高度化や効率化にも取り組んでいます。
また、MASだけでは対応できない資本政策やM&A、IPO支援など人員のキャリアを生かした「専門領域の事業化」にも着手します。すでに行っているコストダウン支援や人材採用などパートナー企業の紹介によるソリューション提供も今後拡大していきます。
やるべき事もビジネスチャンスも数多くありますが、「経営理念の実現のため」という目的を見失わずに取捨選択し、事業化を実現します。
おわりに
加藤先生は「MASへのチャレンジ」、「事業化」、「組織化」、「経営支援を軸とした事業展開」と経営支援型事務所の成長経営を実現されています。私たちは税理士法人ブラザシップ様を「理想的な成功モデルの一つ」として是非ベンチマークしていただきたいと考えています。
もちろんそれぞれのステージで並々ならぬご努力と「その段階におけるお悩み」がありました。私たちもその過程で微力ではありますが協力させていただき、どのように乗り越えてこられたかを見てきました。残念ながらそれをすべてお伝えするのは膨大な量になってしまうため、今回は重要なポイントに絞ってお伝えいただきました。
経営支援型事務所を目指しておられて、お悩みの方はぜひ教えてください。ステージに応じたお悩みを解決するヒントをお伝えします。