売上拡大の支援について

売上拡大支援は難しいとお考えの会計事務所が多いようです。確かに、売上拡大のアイデアや具体策を提案するのは専門外で難しいかもしれません。しかし売上拡大を考える正しい思考プロセスを提供し、経営者から改善アイデアを引き出し、目標管理・行動管理をしていけば結果として成果が生み出せます。
多くの企業で望まれる売上拡大の支援方法をお伝えします。是非お読み下さい。

売上拡大支援のスタンス

売上拡大というテーマは会計事務所にとって支援しにくいと感じるテーマかもしれませんが、経営のブレーンとして支援できる事は数多くあります。

●キャッシュフローから逆算して「必要な売上高を示唆する」
●セグメント別売上と限界利益等から「売上が利益とキャッシュを生む分野を示唆する」
●客数と客単価など「売上の構成要素をひもとき、ツボを重点的に考えてもらう」
●アクションプランの策定と目標管理で「行動してもらい、検証する」

このようなコーチングスタイルで「経営者のアイデアと行動を引き出す」ことで、販売促進手法や営業ノウハウなどを持たなくても売上拡大支援の成果は提供できます。

ベースとなる会計による売上拡大支援

中小企業では売上拡大に強い関心が向けられますが「売上が利益に結びつくためのコスト構造改善」や「利益やキャッシュを最大にするために重点的に売上拡大をすべき分野」がきちんと考えられているケースは少ないのではないでしょうか。
売上拡大支援にあたっては、事前に「利益とキャッシュが残る体質」をつくりこみ、また「それらが最大になる分野」を選び、目的的に活動して頂くように支援する必要があります。
「儲かる体質を作り、儲かる分野の売上拡大する」というのが基本です。

(1)目標売上高の明示

変動損益を活用し、「目標売上高」と「現状との差異」を算出し、どの程度の売上高があがれば良いかを社長と共有する事が売上拡大支援の第一歩です。
その際、必要利益、固定費削減・変動費削減を先に考え、「必要売上高を最小にして、売上拡大を考える」という思考になってもらうよう支援したいものです。また、売上拡大の為には販促費等が増加する可能性があるのでその点も十分考慮する必要があります。

目標売上高の設定の表

(2)セグメント別売上の分析

セグメント会計の手法を活用し、売上分類毎の利益構造を明らかにし、伸ばすべき売上の分野を明らかにします。更に、可能なら売上分野毎の売掛債権額や運転資金差をリンクさせる事ができれば、資金も加味した分析ができるでしょう。

明らかに採算が合わない分野を縮小・撤退して全体利益や資金を優先すべきケースもあります。セグメントは、商品別・顧客別・店舗別・エリア別など企業の実態に合わせて行ってください。しっくりくるまで複数の切り口で検討する方が良いでしょう。

売上内容の分析

売上拡大支援の基本的な進め方

売上拡大を漠然と考えるのではなく、売上高を構成要素に分け、社長に重要な要素をひとつずつ考えてもらうと改善が進みます。

※売上高の構成要素とは、飲食店であれば「客数✕客単価」、対事業所販売の業種であれば「顧客数✕1顧客当り販売数量✕販売単価」というように売上の因数分解した項目を指します。

売上拡大支援の進め方は次の通りです。

●売上を構成要素に分解する。
●構成要素のどこの改善が重要かという課題特定をする
●その推進に向けたプロセスを考える
●それが着実に推進されるように行動することを支援する
●行動した結果を評価し見直す

要は、売上拡大のPⅮCAサイクルが機能するように支援するという事です。
魔法の杖のように売上を増やす方法が見つかるのは極めて稀であり、コツコツと売上拡大の改善サイクルをまわす習慣を付けて頂く事が重要です。

売上の構成要素を分ける

(1)内訳明細作成技術を使う

対事業所向け事業であれば、顧客別売上高・担当者別売上高などの内訳を明示してどこで売上が伸ばせそうか、どうすれば伸ばせるかを考えて頂きます。

下の表は顧客別売上に商品別の内訳を加味した明細です。この数値をみて、誰にどの商品を販売するのが売上拡大に効果があるかを思考して頂くだけでも具体的な活動が見えてきます。

対事業所販売の売上の内訳明細分析

(2)KPIをミエルカする

対消費者向け事業であれば、下の表のように「客数×購買率×客単価」などのKPIに分解して、どのKPIを改善すべきか、どうすれば改善できるかを考えて頂きます。
業種によっては、時間帯別・曜日別の客数などが重要なKPIになる業種もあります。

※KPI(Key Performance Indicators):重要業績評価指標とは、目標達成の度合いを測定する基準となる指標群の事です。
ここでは「財務指標に影響を与え構成要素となり得る指標群」という意味で使います。

対消費者向け販売のKPI分析

売上の内訳明細やKPIは企業の実態に合わせて考える必要があります。

もう少し詳しく、業種・業態別の構成要素のひも解き方と支援の仕方を見てみましょう。

業種・業態別の売上拡大支援

売上の構成要素は、業種・業態により異なります。それは売上拡大の管理ポイントが異なり、売上拡大のツボが異なるということです。
ここでは、2つのタイプの売上拡大支援を見てみましょう。

(1)対事業所販売・生産財

顧客企業の製品を構成する物やサービス、事業に必要な設備やサービスを提供する事業を指します。
例えば、下請け建設業、部品・副資材製造業、加工サービス、技術サービス、運送業、設備販売・メンテナンス業、印刷業などの業界です。

見込客に自社の取扱製品・サービスを納入するために、「ニーズ把握」「提案・見積もり」「口座開設」という新規顧客開拓活動を行い、口座開設できた顧客に「注文増加」「取扱い商品追加」「回収」などの営業活動を行います。

これらの業界の売上は「顧客数✕1顧客あたり販売数量✕販売単価」に分解されます。
この構成要素のどこが重要かという課題特定をし、その推進に向けたプロセスを考え、それが着実に推進されるように行動することを支援します。

●顧客数の増加が重要な場合 可能客をリスティングし、調査及び評価をする
・開拓ターゲットを決める
・攻略方法やセールスツールを決定する
・営業のアクション管理を行う
・結果評価と是正をする

●1顧客あたり販売数量が重要な場合
・顧客別のシェアを把握し、重点拡販顧客を設定する
・売込強化商品を決定する
・提案手法を決定する
・アクション管理をし、結果評価と是正をする

●販売単価が重要な場合
・商品別粗利を把握する
・材料・外注の単価推移を確認する
・単価UP商品と金額を決定する
・交渉先の特定と交渉手法を決定する
・アクション管理をし、結果評価と是正をする

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(2)対消費者販売・サービス

消費者が日常的に利用する店舗型サービスを営む事業、例えば、飲食店、美容室、エステ、 マッサージ店などについて考えましょう。

このような業種では、利用者のニーズは日常的・定期的に発生し、店頭・サイン・チラシ広告などで「店舗に集客」、「サービスを提供」「満足して頂き」「リピート客・固定客になって頂き」「紹介を頂く」といった店舗営業活動を行います。

 

これらの業界の売上は、「来店客数×客単価」に分解され、更に来店客数は「新規顧客数+リピート客数+愛顧客客数」に分解されます。顧客台帳がある美容室やエステなどではこの分解をよく利用します。

●新規来店数UPが重要な場合 
・販促企画別の費用対効果を評価する
・企画改善の他、強化企画・中止企画の決定など販促企画の見直しをする
・アクション管理をし、結果評価と是正をする

●リピート率改善が重要な場合
・顧客満足度調査をし、改善策を起案する
・リピート販促の改善を考える
・リピート率の低い担当者の教育を考える
・アクション管理をし、結果評価と是正をする

●客単価改善が重要な場合
・推奨サービスの特定をする
・おすすめトークやPOPを考える
・アクション管理をし、結果評価と是正をする

同じサービス業でも、飲食店などでは顧客構造が見えにくいため「曜日別来客数」「時間帯別来店客数」などの指標を多く使います。
小売店など、来店が必ずしも購買につながらない場合は「来店客数✕購買率✕客単価」という分解になります。
また一戸建て住宅建築・自動車販売・家具販売のような対消費者向けの耐久消費財の場合は「見込客数✕契約率✕購入単価」といった分解になります。

このように、企業の実態に合わせて、売上の構成要素を分解し改善活動の支援をしていく事が大切です。

また、売上の構成要素それぞれの具体的な改善手法について会計事務所が具体的指導をするのは難しいと思います。
社長や営業部長・店長に、どうすれば改善できるかを考えて頂き、その推進管理と評価という形で支援すれば良い結果が得られます。

中小企業の売上拡大テーマの優先度

売上拡大というと、顧客数を増やす為に新規顧客を開拓するという思考になりがちです。
しかし中小企業においては、機会損失が多く客単価や案件単価にロスがある場合も多く見られます。
したがって、「売上拡大は成果に近いところから着手する」という点を意識してテーマの優先度決めの支援をする必要があります。

インターフェイス経営支援倶楽部の会員事務所様の指導事例では、「単価の見直し・改善」から着手して大きな成果を生んでいます。

これは、中小企業では、原価・売価の定期的見直しや顧客との交渉活動が出来ていないという体質的・習慣的問題がある事を意味するものと思われます。

中小企業向けのMASでは下記のような改善ステップを推進して成果を創出しているケースが多く見られます。

例)対事業所販売
Step1.見積りをきちんとして単価を適正にする
Step2.既存客のシェア・アップを図る
Step3.更に不足する売上を新規顧客開拓で補う

例)対消費者販売
Step1.客単価がきちんと確保できる接客をする
Step2.リピート客が増える接客をする
Step3.新規来店客増加の販促を打つ

一般的に、単価アップや既存客シェア・アップに販促費は不要で、「増えた粗利がそのまま経常利益」になりますから、赤字企業も一気に大幅黒字化というケースも多く出ています。

もちろん売上高を大幅に増やし、成長性を確保しようと思うと、新しい顧客の開拓は必須であり、必ず取り組まなければなりません。
しかし、単価や既存客シェアに機会損失があるままで新規顧客開拓をしても効率的な売上拡大や利益創造はなかなか実現できません。

インターフェイス顧客事務所の指導成果事例が実務経営ニュースに多数掲載されています。
ご関心のある方は、無料会員登録して頂き是非お読み下さい。

獲得した売上で利益を残すために

(1)全社で情報を共有する

中小企業では、獲得した売上から利益とキャッシュを残す仕組みが不足するケースが多々あります。
例えば、
●営業から製造の状況が見えないため「受注しても外注に出さざるを得ない」
●製造から受注予測が見えず「段取りが遅れコストアップになる」 
といった状態です。

このような事態を解消し、せっかく獲得した売上で利益とキャシュを残すには、受注から製造・納品に至るまでの情報を、下図のようなかたちで共有し、「全社で利益を残す知恵を出し行動する」という取り組みも必要です。

社内情報共有

(2)キャパシティを確保する

キャパシティとは、顧客に商品やサービスを提供するための「設備・人材などの許容量」を指します。
設備がフル稼働な分野の商品を受注しても、外注費が増えたり、納期が遅れたりという事態に陥ります。この場合、「設備増強する」か「稼働率の低い設備でできる商品を受注する」道を考えるべきかもしれません。また、サービスを提供する人材の不足や育成遅れの状態で更に受注を増やすと、品質不良が起きるかもしれません。

売上とは、商品やサービスを適正に提供して、「顧客満足とリピートに繋げる事」がゴールですので、このキャパシティの考察は極めて重要と言えます。
MASの実務では、売上拡大の為に、設備増強や人材採用・育成のコーチングが必要になるケースもでてきます。

最後に

儲からない売上拡大に取り組むケースをよく耳にします。販促コストをかけ、安い価格でマーケティングをし、リピート率の低い顧客が増え、結果として減益といった類の話しです。
会計事務所の売上拡大支援は「経常利益とキャッシュが増える売上拡大支援」であるべきです。また、そのような支援が出来るのは、財務と会計が読める会計事務所だけです。
売上拡大の具体的提案はできなくても、社長と組織が持つポテンシャルを最大限に引き出すことができれば売上拡大も出来ますし、高収益経営を実現して頂く事ができます。
是非、中小企業の売上拡大支援に一歩踏み出して頂きたいと思います。