MAS事業化の成長ステージと成功要因

会計業界においてMASの重要性が語られ、事業化にチャレンジされる会計事務所も増えて参りました。しかしそのMAS事業化に成功している会計事務所はまだ少数のようです。
ここでは、MAS事業化の成功要因について考えてみます。是非お読み下さい。

MAS事業の立上期の成功要因は「指導成果」である

立上期とは、MAS契約を数件受注する段階を指します。

この時期の成功要因は「指導成果」にあります。経営者にとってMAS指導を受ける価値は「自分の会社が良くなる事」ですから、その事は容易にご理解頂けると思います。
指導成果の提供には2つの価値があります。

●「契約継続率」が高くなり、「口コミ・紹介」による新規拡大の機会が増えます。
●事務所に「MASへの自信」が湧いてきて「事業拡大の意欲」へとつながります。

反対に指導成果が出ないと「解約」が増えいつまでも収入の蓄積ができずに苦労する事になり、MASへの自信が持てず、工数もかかり「事業化は難しいという発想」になってきます。

立上期に指導成果を創出するポイントが2つあります。

●指導成果を出しやすい企業を選ぶ
●指導成果を提供できる可能性の高い人材を選ぶ

(1)指導成果を出しやすい企業を選ぶ

指導成果創出の為には、「指導成果を創出できる経営ロジック」をマスターする事はもちろんですが、「最初は成果の出やすい企業を選んで提案」する事が大事です
成果の出やすい企業の要素は次の3つです。

●経営者の問題意識が高い
●素直で気づけば即行動を起こす
●財務が過度に悪くない

会計事務所では、最初から難易度の高い「財務状態の悪化した企業」にMASを提供しようする傾向がみられます。これは経営状態の悪い企業を救いたいという愛情の現れでしょう。
しかし、そのような企業のMASはやや難易度が高く、少し経験を積み指導成果を創出した後で取り組まれるのが良いと思います。

(2)指導成果を提供できる可能性の高い人材を選ぶ

指導成果を出せる手法が事務所内で固まるまでは「適性のある方を担当に任命」して推進するのが成功確率を高めるポイントです。
もちろん、自らも経営をしている事務所の代表が最初に取り組まれるのが一番です。
それが難しく職員さんから最初のMAS担当者を選ぶ場合には次のような選択基準を持たれる事をお勧めします。

●中小企業の経営支援への思いが強い
●素直で行動力があり、わからない事を見識者に相談する姿勢がある
●継続して取り組む力がある

この3つがMAS担当者に不可欠な基礎能力です。
このような方にしっかりしたMASロジックを学んでいただき推進する事をお勧めします。

MAS事業確立期の成功要因は「時間確保」である

確立期とは指導成果をベースに、10件~20件の指導を行う段階です。
立上期のMAS担当者に任命された方も、会計業務に追われMAS業務に取り組む時間的余裕が十分にある状態とは言えないでしょう。この段階で必要になるのが、MAS担当者の税務業務を他の監査担当者に移譲して、MAS工数を確保する事です。

「MASが1件受注できる度に税務担当先を他の方に移譲する」など、組織的にMAS工数を確保する事が、この確立期の成功要因です。

この段階ではトップの先生にお願いしたい重要な事が2点あります。

①「経営支援型」会計事務所になるというコミットメント
② 監査担当者が生産性を高めて税務顧問先の受け皿を作るという合意形成と実践

MAS事業はMAS担当者だけで行えるものではなく、組織的に取り組まないと成功しません。組織全体でMAS事業に取り組める体制を整え、MAS工数を確保する事が不可欠なのです。また、税務部門の皆さんにおいては、「MAS事業化を機会に生産性を高めて受け皿を作る」というお気持ちをお持ち頂きたいと思います。

MAS事業拡大期の成功要因は「MAS組織の確立」である

拡大期とは指導先が50件、更に100件を目指せる段階を指します。
最初のMAS担当者が指導成果を出し、MAS契約先企業の数が増えていくと、口コミ紹介などでMASの商談案件が更に拡大します。
この段階では、事業拡大に向けた組織体制を本格的に整備する必要があります。

組織体制整備のひとつの方法は監査担当者でMASに取り組みたい方をMAS担当者に任命する事です。人材の選定基準は立上期と同じです。

●中小企業の経営支援への思いが強い
●素直で行動力があり、わからない事を見識者に相談する姿勢がある
●継続して取り組む力がある

もうひとつの方法は新規採用です。これは人物が良くわからない状態でのMAS担当者任命となりますので、極めて慎重に行いたいものです。
選定基準は、立上期のMAS担当者の選定基準に加えて、

●事務所の理念への共感度
●先輩MAS担当者・監査担当者への敬意の念

等が必要となります。

「そのような人材を採用できる時代ではないよ」という声が聞こえてきそうですね・・・。
実は、経営コンサルタントになりたいという人材は結構多く存在します。
中小企業の経営支援をしたい人材は案外多いものです。

●若手のバンカー
●保険営業マン
●中小企業診断士に合格したが独立する力はまだない若手
●コンサル志向の新卒大学生

これらの人材層をターゲットにMAS担当者のペルソナを明らかにして採用マーケティングを展開すれば、必要面接数は確保できます。

この話をすると「会計や税務がわからない人材にMASができるのか?」という質問を頂きます。この人材育成手法は別の項でお伝えしたいと思います。

指導成果をベースとしたマーケティングは比較的容易である

これまでMASの指導成果とMAS工数確保・人材確保の話しが続きました。
ここまでお読み頂いた多くの方は「MASの受注力や見込客発掘のマーケティングは成功要因ではないのか?」という疑問が湧いてきたのではないでしょうか?

もちろん、MAS事業の立上期では数件の受注が出来なければ指導成果も創出しようがありませんから受注は不可欠です。しかし会計事務所の顧客構造や税務顧問を基盤とした信頼感や社会的信頼性があれば、数件の受注が出来ない訳がありません。
それは正しいMAS商談の進め方をマスターすれば十分に可能です。

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受注した企業で指導成果を出せば、同業者の社長やお付き合いのある社長を紹介頂けます。MAS指導先のメインバンクの融資担当者や保険営業も、その素晴らしさに気づいて融資先や契約先を紹介してくれるようになります。
この「指導成果を軸としたマーケティング」だけで年商5千万円程度のMAS事業を作り上げる事は十分可能なのです。
そのマーケティング手法については、別の項や弊社会員事務所様の事例でお伝えしたいと思います。

最後に

事業には必ず成功要因があります。
MAS事業については、各成長ステージの最大の成功要因は、「指導成果」「MAS担当者の工数確保」「組織体制整備」なのです。
確かな指導品質と、MAS担当者の工数確保ができれば、MAS事業は確実に成長します。
是非とも正しいステップで、正しいポイントをおさえてMAS事業化を成功させて頂ければ幸いです。

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