AI・クラウド適応型の会計事務所には、そのノウハウが蓄積されます。一方あらゆる業界で起きているAI・クラウドの波に取り残される中小企業が多くあります。
その中小企業のITO(Information technology optimization:情報技術最適化)の支援に取り組む事で会計事務所には大きなビジネスメリットが生まれます。
AI・クラウドがもたらす会計事務所への影響は、仕事が無くなるのではなく仕事が変わる事です。AI・クラウドでねん出された時間を経営支援にあてたり、中小企業のITO支援にあてたり、むしろ高付加価値化への絶好のチャンスとなります。
ご自身の事務所の方向性を見出して頂きたいと思います。是非お読み下さい。
このページの目次
ITの恩恵を享受する若手会計事務所と業界への影響
ITリテラシーの高い若手会計事務所では、IT技術・ツールを駆使したサービス提供が進んでいます。それらは単なるクラウド会計の活用という範疇にとどまらず、会計事務所のサービスモデルそのものの変革であり、顧問先の業務革新を促す取組みでもあります。
●資料のやりとりは、dropbox:ドロップボックス(注1)を活用
●質問やコミュニケーションはChatWork:チャットワーク(注2)を活用
●面談はskype:スカイプ(注3)やzoom:ズーム(注4)といったネット会議で行う
●顧問先の売掛帳・買掛帳・経費帳をGoogle スプレッドシート(注5)に入力してもらい
リアルタイムに共有
●完成したデータをクラウド会計ソフトにインポートして試算表を作る
などの取り組みです。
このような徹底した合理的な仕組みでローコストなサービスを提供可能にし、新設法人やスモールビジネスの顧問料の低価格化につながっています。
多くの会計事務所の顧問先である既設法人の価格破壊に即つながるとは考えにくい状況ですが、将来の優良企業が生まれる可能性のある新設法人やスモールビジネスをITフル活用型の会計事務所が囲い込み、将来の優良企業候補を生み出す可能性は高いと思われます。
(注1)Dropbox:ドロップボックスは、アメリカのDropbox, Inc.が提供しているオンラインストレージサービスである。オンラインストレージとローカルにある複数のコンピュータとの間でデータの共有や同期を可能とする。
(注2)ChatWork(チャットワーク)とは、ChatWork株式会社が提供するクラウド型ビジネスチャットツールである。メッセージのやりとりだけでなく、タスク管理やファイル共有、ビデオ通話などが可能である。
(注3)Skype(スカイプ)は、マイクロソフトが提供するインターネット電話サービス。
(注4)Zoomは、アメリカのZoom Video Communicationsが作ったWeb会議システム。
(注5)Google スプレッドシートは、Googleが提供する表計算クラウド。
今後の会計事務所に影響を与える可能性のあるIT技術
更に今後会計事務所に影響を与えそうなIT技術があります。
●OCR(Optical character recognition:光学文字認識)
●RPA(Robotic Process Automation)
●AI(Artificial Intelligence:人工知能)
OCRは紙をスキャンした情報を画像認識し、AI技術により文字情報として認識しデータ化する仕組みです。手書き情報の識字率が95%を超えるものも登場しており、人の入力の正確さを超えるというから驚きです。
更に、手作業で行っているシステムの操作を自動で行えるRPA(Robotic Process Automation)により、データの自動的な処理が実現できるようになりつつあります。
これは紙の証拠書類を見ながら会計ソフトに仕訳入力するという作業を大きく変えるものになるでしょう。
AI・クラウドが会計事務所の仕事を無くすのではなく、会計事務所の業務を大きく変える時代が到来したと言えます。顧客構造や組織体制が異なる会計事務所ではそれぞれの体質や経営目的にマッチしたITO(Information technology optimization:情報技術最適化)を実現するための研究を進めるべきだと思います。
同時に顧問先のあらゆる業界で、AI・クラウドが普及
会計業界同様に多くの業界でAI・クラウド化が進み、業務のIT化を推進せざるを得ない状況になってきます。
これらのIT活用は顧問先企業にとって、業務スピード・顧客満足度・経営管理レベルの差となり収益性の優劣を決める要因にもなってきます。
例えば、飲食店ではタブレットを活用したPOSレジが普及し、会計ソフトと連動するだけでなく、飲食店経営に必要な様々なKPI((key performance indicators:業績評価の重要管理指標)が瞬時に見れるようになっています。重要な管理対象である人件費もクラウドでシフト管理・人件費管理ができるようになっています。
建設業でも、図面や現場写真を共有でき、本社からの指示や現場からの報告をクラウド上で共有できる安価なシステムが普及しつつあります。仕事と職人をつなぐビジネスマッチングクラウドも大きく伸びています。
これらのクラウドシステムが各業界で普及するとビッグデータが蓄積され、AIを活用した様々なサービスが展開されるようになるでしょう。
このような顧問先企業を取り巻く、IT・AI・クラウドの環境変化が顧問先企業の経営に変化を与え、会計事務所により大きな変革を求めるようになる可能性を秘めています。
ITO(Information technology optimization:情報技術最適化)のビジネス化
このような顧問先企業のITに関する環境変化に対し、会計事務所が積極的に支援する立場になるか否かで、大きく顧問先との関係性が変わってきます。
ITO支援そのものがコンサルティング料として成り立つようにもなるでしょうし、ITO支援により顧問先の業績が良くなり顧問料UPにつながる可能性も十分にあります。
更に、ITO支援コンサルを武器として新規顧問先拡大して、税務顧問契約やMAS契約につなげる事も可能でしょう。
会計事務所は自らのITOを急ぎ、そこで蓄積されたノウハウを武器にマーケティングを展開する事が可能になります。
もちろんIT技術の進化は速いため、全てを自らの事務所で研究開発するのには限界があると思います。信頼できる専門家や団体とのコラボレーションでビジネスモデル化を図る必要があると思います。
インターフェイスでは、士業と顧問先企業のITO(情報技術最適化)のための団体の立ち上げに協力しています。詳細は別途ご案内差上げたいと思います。
最後に
ITや通信のテクロジーの進化は、会計事務所はもとより顧問先企業の経営に大きな変革をもたらします。
それを脅威として捉えるのでなく、機会として捉え自らの経営をイノベーションするところに経営の面白さがあります。
テクノロジーの進化を前向きに受入れ、新しい時代のビジネスモデルを創造して頂きたいと願っております。