製造・建設の現場や顧客サービスの現場の労務費は、企業の収益性や生産性に大きく影響を与えるコストです。中小企業においては、その労務費の最適化に向けた検討が十分でなく、機会損失が発生しているケースが見られます。
労働人口減少・採用難などから人件費高の状態は続くと思われ、労務費管理は更に重要になります。
ここでは労務費の最適化支援についてお伝えします。
労務費の意義と労務費最適化の2つの視点
労務費は、製造やサービスに不可欠なコストであり、付加価値を生む重要な要素です。
単純にコストダウンできれば良いというものではなく、労働生産性を高め社員の士気や年棒にも配慮をしつつ、かつ労務費比率や労働分配率は最適化しなければなりません。
労務費の最適化のポイントは、「ムダをなくして生産性を高める」事です。
その内容を考えていきましょう。
労務費の構成要素は、「人数×一人あたり人件費」です。
従って、その最適化の視点は次の2つになります。
●人数を最適にすることは出来ないか?
●支給額を最適にすることは出来ないか?
これらを最適にするための切り口と方法論を社長とともに話し合い、社長のアイデアを引き出します。
人数の最適化
人数の最適化については、「既存の製造・サービスのモデルの中で最適化」と「機械化・自動化による最適化」を考える事になります。
(1)既存の製造・サービスモデルでの人数最適化
既存のモデルでの人数最適化は、次の2つの視点からひも解きます。
●人の配置に過不足が発生する状態を改善する
●作業改善によって生産性を高める
以下、その内容を見ていきます。
①人の配置に過不足が発生する状態を改善する
この改善の為には人の配置の過不足を可視化する必要があります。
企業の目的・実態に合わせて「工程別」「時間帯別」「月別・季節別」など適切な区分に分けて人の過不足を可視化する支援をしましょう。飲食店等では「曜日別✕時間帯別」など2つの要素を盛り込んだ区分も必要でしょう。
人の過不足の可視化には以下のようなフォーマットを準備するとよいでしょう。
人の配置には仕事量や来客数の予測が必要でしょうから、そのような列を加えて頂いても結構です。
これらの現状を可視化し、社長や場合によっては現場の責任者と共に検討を行います。
②作業改善によって生産性を高める
生産性が低ければより多くの人数が必要になりますので、生産性改善の視点も必要です。
社長や現場の責任者と次のような点をチェックして改善点を見つける支援も重要です。
次のような視点で社長と一緒に考えてみましょう。
☑チェック
□作業のマニュアル化による工数削減ができないか?
□標準作業時間の設定・管理により工数削減ができないか?
□治工具活用による工数削減ができないか?
□機械と人のバランスを改善して工数削減ができないか?
□手直し削減で工数削減ができないか?
□レイアウト改善による歩行・運搬工数が削減できないか?
□設備停止を削減して工数削減ができないか?
□標準的な稼働状況を想定した固定人員で、ピーク時に派遣・パートアルバイトなどの要員でまかなえないか?
(2)機械化・自動化による最適化
工程の機械化・自動化による人数削減の可能性は、次のようなプロセスで考えます。
機械化可能な工程はどこかを考える
●機械投資額から減価償却費(又はリース料)はどれくらいになるかを考える
●削減可能な人件費を試算・比較し、意思決定する
工程ごとの機械化・自動化の可能性や期待成果を可視化するためには、下記のようなフォーマットを準備するとよいでしょう。
この情報をもとに、社長と一緒に検討を行います。
支給額の最適化
支給額を最適化するには「残業・休日出勤の削減」が優先されます。中小企業ではまれに基本給額が過剰な場合もありますので「基本給の妥当性検証」が必要事もあります。
(1)残業・休日出勤の削減
この点はまず「残業・休日出勤の現状を把握」し、「適正な超過勤務時間を想定」します。
それを達成できるように、社長と共に改善策を考えます。以下のようなフォーマットを用いて検討するとよいでしょう。
(2)基本給の妥当性検証
時折、基本給の支給水準が高くなりすぎているケースもあります。
基本給の妥当性は、厚生労働省の「賃金センサス」で検証するとよいでしょう。
HPで「賃金センサス」で検索するとある程度の詳細情報が得られ「企業の支給実態との比較」が可能です。
現状の固定給に見合う成果を出せていない場合、賞与支給額で調整する等の方法も考えられます。やむを得ず基本給の削減が必要な場合には、労務問題も絡みますので社労士の先生など専門家のセカンドオピニオンも活用しながら対策を検討するのが妥当です。
要員の配置転換について
人数の最適化により要員に余剰が生まれた場合、リストラなどの他に「売上拡大に寄与する配置転換」も検討する価値があります。
例えば、製造部門の社員は技術的に詳しい知識・経験を持っているので、営業を支援するセールスエンジニアのような役割を果たして売上拡大に貢献する可能性も大いにあります。これらの配置転換も視野に入れて社長と検討してください。
設備と人員のバランスについて
採用難により、保有している設備が稼働できず売上の機会損失または外注費の発生という事態を招いている企業もあります。
例えば、運送業でドライバーが採用できずに未稼働車両が発生している等のケースです。
このような場合は、人件費削減ではなく人材採用が利益アップの対策となります。
設備と人員の適正化も利益創出という観点で注目すべき点といえるでしょう。
最後に
労務費の最適化は、人数・支給額ともに「まずムダをなくす」ことから始まり、生産性を高め、そこで得られた利益を原資に「内容の良い支給額UP」を目指すべきでしょう。
労務費を構成する要素を紐解き、そこに関連付けられるデータを採取し、どこから手を付けていくべきなのか、またどうすれば改善できるかを社長と共に考えれば必ず成果は創出できます。是非ご支援ください。