外注費が大きい業界ではそのマネジメントが収益性を大きく左右します。
会計事務所は製造や施工に精通している訳ではないと思いますが、社長に対する的確な問い掛けと目標管理・行動管理で外注費削減に貢献する事は可能です。是非お読み下さい。
経営から見た外注費の意味
外注費は商品を構成する重要な構成要素です。企業は内製できない工程・加工を外部に委託します。
外注費は大きく2つの発生理由があります。
●機能的・設備的に内製できるがキャパシティ不足から外注するもの
●機能的・設備的に内製できないから外注するもの
基本的に内製を増やした方が企業に付加価値は残りますが、設備や人材という固定費を増やして内製化した場合、売上減少期に利益を圧迫ことになります。
従って、短期的な利益と中期的リスクを合わせ考え最適な戦略を考える必要があります。
外注費削減の2つの考察方法
(1)外注費を内訳明細から考察する
外注費を「購入先別」「品目別」に分けて考察します。以下のようなフォーマットで内訳明
細を作成し、社長と共に検討してください。場合によっては現場の責任者も交えて検討し、
改善アイデアが出れば、それを実行して検証していきます。
(2)外注費の構成要素から考察する
外注費の構成要素は、「購入量×購入単価」です。
従って、その削減の視点は、
●購入量を最適にすることは出来ないか?
●購入単価を最適にすることは出来ないか?
の2つになります。
これらを最適にするための切り口と方法論を社長とともに話し合い、社長のアイデアを引き出します。
外注の購入量(発注量)を最適にする具体的な切り口
外注の購入量を最適にする視点は大きく3つあります。
これらの視点を社長に問い掛けて具体的アイデアを抽出してみましょう。
(1)生産性を高め、外注を削減する
現場の生産性を高めるには、製造ラインの生産性向上はもとより、加工高の波を減らし平準化するために営業や設計・購買の協力も必要になってきます。次のような点について社長と一緒に考えてみましょう。
☑チェック
□工程管理を充実して外注を減らせないか?
□人員増加で設備稼働率を高められないか?
□営業の納期交渉・早期受注で内製化が図れないか?
□設計のスピードアップで内製化が図れないか?
□材料の納期短縮で内製化が図れないか?
(2)内製化できる商品の受注を増やす
これは、そもそも外注費が発生しない分野の売上を増やして全体の外注費比率を低減しようという取り組みです。
この取り組みには営業の協力が不可欠ですし、また利益の残る売上を作るのも営業の重要な使命です。次のような点について社長と一緒に考えてみましょう。
☑チェック
□内製化商品の販売を強化して外注費削減できないか?
□内製化商品を買ってくれる新規顧客の開拓で外注費比率を低減できないか?
(3)機能的・設備的にできない外注を削減する
内製化できない工程を設備投資や技術開発により内製する事もひとつの方法です。
これは投資を伴ったり固定費アップにつながりますので、投資した内容の稼働率が確保できるか慎重に検討する必要があります。
このような場合の会計事務所の役割は次の通りです。
●社長から、投資後の稼働率や外注費削減効果を良くヒアリングする
●数値のシミュレーションにより意思決定の支援をする
外注の購入単価を最適にする具体的な切り口
外注の購入単価を最適化する視点には大きく2つの方向があります。
社長と一緒に検討してみましょう。
(1)発注内容・発注方法を最適にする
中小企業では、外注先への発注内容(仕様)が曖昧なケースがあります。これは外注先からの追加請求につながる要因となります。
また、発注が遅れ納期が短いため高単価で請求されるというケースもあります。外注費を最適にするには、仕様を明確にし、なるべく外注先の手間がかからず手戻りが無いような発注と管理をしていく必要があります。
次のような点について社長と一緒に考えてみましょう。
☑チェック
□外注する仕様に過剰品質はないか?
□発注先の集約・ロット拡大でコストダウンできないか?
□納期・納品方法を変えてコストダウンできないか?
□支払サイトの短縮でコストダウンできないか?
□外注先の生産指導でコストダウンできないか?
□材料・加工の分離発注でコストダウンできないか?
(2)発注単価、発注先を最適化する
外注費の単価は、発注する年間金額や発注条件、外注先の育成などにより金額が変動します。
これらの外注先の付き合い方を見直す事でコストダウンにつながる事があります。
外注先の見直しや相見積もりも年に1回程度は実施する事が望ましいでしょう。
次のような点について社長と一緒に考えてみましょう。
☑チェック
□外注先からの見積もりの妥当性を検証しているか?
□相見積もりを励行しているか?
□新しい発注先を模索しているか?
顧客の要望変更による外注費負担
中小企業では、顧客の要望変更などにより外注費がコストアップになる事があります。この場合は、本来顧客に追加請求をすべきものですが、中小企業の社長は次の仕事を心配してなかなか顧客に追加請求を言い出せない傾向にあります。
一方外注先には仕事をした分支払いが発生し、自社の収益性低下を甘んじて受ける事も多いものです。
そもそもの契約書の内容の見直しやコストアップ理由の記録化など交渉力を高める支援が必要なケースもあります。
最後に
中小企業では、外注費のマネジメントが十分でないケースが多く見られ、外注費のコストダウン・最適化が進むと収益体質が良くなり、収益性改善に大きく貢献しています。
会計事務所は製造や施工の専門家ではありませんが、ここでお伝えしたようにコストダウ
ンの適切なひも解き方をマスターして、社長の改善アイデアを引き出して頂ければ、必ず企
業に成果を提供できます。是非ともチャレンジして頂きたいと思います。