MASで指導成果を創出するには、財務上の問題点からその原因を現場に求め、社長に改善アイデアを出して頂き行動して頂く必要があります。
そのような支援を簡便法で行えるのがキャッシュフロー改善ツリーです。
MAS担当者のみならず、監査担当者の経営コミュニケーションにも活用できる手法です。是非お読み下さい。
このページの目次
- キャッシュフロー改善ツリーとは?
- キャッシュフロー改善ツリーの用途
- 問題を因数分解するキャッシュフロー改善ツリー
(1)大枠の改善ポイントを考える
(2)売上拡大が課題の場合
(3)材料費削減が課題の場合
(4)外注費削減が課題の場合 - 問題を整理するフォーマット
キャッシュフロー改善ツリーとは?
キャッシュフロー改善ツリーは「財務と経営活動をつなぐ」ツールで、財務数値上の大きな問題を見極め、その原因はどこにあるかを考えるMASツールです。
具体的には
●CFの重要構成要素である「営業CF」、
その要因である「売上」「変動費」「固定費」「運転資金差」を概観する
●更に「投資CF」「財務CF」を概観する
●そして、検討すべき問題点を特定して深掘りする
という構成になっており社長と会計事務所の「経営コミュニケーション」を可能にするものです。
キャッシュフロー改善ツリーの用途
キャッシュフロー改善ツリーは様々な場面で活用できます。
①MAS担当者の事前考察用のツールとして
・これから営業する企業の事前考察で仮説を立てる。
・MAS契約した企業の財務と経営活動の関連について仮説を立てる
②社長とMAS担当者が一緒に考えるツールとして
・営業先の社長と、財務改善を一緒に考える
☞提案の下地作りをして、「中経策定」や「MAS提案」につなげる
・MAS契約先企業の社長に財務と経営活動のつながりをイメージしてもらう
③社長と監査担当者がCF改善を一緒に考えるツールとして
・財務をベースに経営に踏み込んだ会話ができるため監査訪問時の付加価値の高い会話
が可能になる
ここでは、キャッシュフロー改善ツリーの「簡易版」でイメージして頂きます。
問題を因数分解するキャッシュフロー改善ツリー
(1)大枠の改善ポイントを考える
まず、CFの構成要素の大枠を社長に見せながら内容をお伝えします。
CFと言ってもイメージできない社長もおられると思うので、
●CFは、一定期間の商売でいくら現預金が増えたか減ったかを表すものです
●当然それは増えた方がいいですよね?
と言った具合でわかりやすい会話でスタートすればよいでしょう。
そしてそのCFの構成要素をイメージして頂きながらCF改善の方向性を考えて頂きます。
●CFを増やすには、
●営業CFを増やすか、投資CFを適正な範囲で行うか、借入返済などの財務CFを適正な金額にするかという3つの方法があります
●社長はどれを改善するのがいいと思われますか?
更に、
●営業CFを増やすには、
●売上拡大か、材料費や外注費などの変動費削減か、固定費削減か、運転資金差を減らすかという4つの方法があります
●社長はどれを改善するのがいいと思われますか?
このようにCFを改善するポイントを社長と会話しながら特定していきます。
(2)売上拡大が課題の場合
仮に、営業CFの売上高が改善ポイントであるという事であれば、売上拡大をゴールとしたロジックツリーを使って、改善ポイントを深掘りします。
【対事業所ビジネスの場合】
売上拡大をゴールに社長と以下のような掘り下げを行います。
●顧客数を増やす
●既存顧客の取引量を増やす
●単価を適正にする という3つの方法が考えられますが
●改善ポイントはどれだと思われますか?
といった具合です。
仮に、「顧客数を増やす―新規顧客を増やす」が重要となれば、
・商圏内のターゲットは誰かというリスティング
・ターゲットの発注量や成長性はどうか?
・競合はどこが入っており、強みと弱みは何か?
・自社が新規取引を実現する為の武器は何か?
・誰が、いつ、どんな方法で、アプローチするか?
といった流れで具体的なアクションプランの検討に入ります。
仮に「適正単価で売る」が重要となれば、
・どの顧客のどの商品を適正単価にするのか?
・材料費や外注費の推移をみて、どこまでが適正単価なのか?
・リスクの低い顧客など、どの顧客から順番に交渉するのか?
・誰が、いつ、どんな方法で、アプローチするのか?
といった流れで具体的アクションプランの検討に入ります。
これらは、経営計画の需要なインプット情報となり、財務計画に反映されて財務のモニタリングと同時にアクションプランのモニタリング対象となります。
【対消費者ビジネスの場合】
参考までに、対消費者ビジネス(B2C)の場合の売上拡大ロジックも載せておきます。
ここでは、売上拡大を、顧客数✕購買率✕客単価で因数分解しています。
●小売業では、この因数分解が適していると思います
●美容室や飲食店では来店=購買というケースが多いでしょうから購買率は省いて検討して結構です。
●飲食店では、顧客名簿獲得率が低いので、顧客数を新規顧客・固定客化率・来店頻度と因数分解するのが難しいでしょうから、時間帯別顧客数・曜日別顧客数などに因数分解してもいいですね。
重要なのは、その企業の実態に合わせた因数分解に加工して社長と一緒に考える事です。
★売上拡大支援に関心のある方は、関連記事「売上拡大の支援について」をご覧ください。
(3)材料費削減が課題の場合
材料費の場合は、材料費削減をゴールとしたロジックツリーでひも解きます。
材料費は、「使用量削減」と「単価低減」に因数分解して考えます。
使用量の削減は、材料の歩留り(購入量に占める製品に反映された量の割合)の改善を考えたり、商品そのものの設計・仕様の見直しや製造方法の見直しなど、現場で発生しているロスがないかという視点で社長に考えてもらいます。
材料の単価の低減については、購入ロットや単価の見直し、更に購入先の見直しなど、購買活動の妥当性などを見直してみて頂きます。
★材料費削減支援に関心のある方は、関連記事「材料費削減のご支援」をご覧ください。
(4)外注費削減が課題の場合
外注費の場合は、外注費削減をゴールとしたロジックツリーでひも解きます。
外注費は、「内製化を増やす」と「単価低減」に因数分解して考えます。
内製化を増やす為には、工程改善で生産性を高めたり、顧客の納期を交渉する事で工程にゆとりが出て外注がへらないかなど、社長に内製化の量を増やすための対策を考えてもらいます。
外注の単価の低減については、発注単価の妥当性の見直し、外注先が単価面で協力しやすくなるような発注の仕方(納期やロット)がないかという購買活動の妥当性などを見直してみて頂きます。
★外注費削減支援に関心のある方は、関連記事「外注費削減のご支援について」をご覧ください。
問題を整理するフォーマット
キャッシュフロー改善ツリーで財務改善ポイントの特定と深掘りができたら次のようなフォーマットに検討結果を整理しておくとよいでしょう。
最後に
会計事務所の皆様は、現場の問題に踏み込んだ会話をするのは難しいとお考えの方も多いと思います。
しかし、勘定科目ごとにその数値の要因を因数分解して社長に問いかければ社長から改善アイデアが出ます。
それを財務計画と行動計画に反映し、月次で財務と行動のモニタリングをすれば改善成果が創出できます。