MASの定義とサービスの概論

MASは、その定義とサービスモデルがはっきりしないと、あやふやなサービスとなってしまいます。
ここでは私共が提唱し、営業面・指導面共に成果を創出することが出来ているMASの定義とサービスの概論についてお伝えします。是非お読み下さい。

小さな会社の経営管理コンサルティング

私どもは会計業界が提供するMASを経営コンサルタント業界のひとつの業態であると考えています。その経営コンサルタント業界では、総合的なコンサルティングから「業種特化コンサルティング」と「テーマ特化コンサルティング」に分化しつつあります。
私共ではMASを「経営管理というテーマ特化型コンサルティング」であると考えます。

MASの定義とサービス概論

また、MASの対象は会計事務所の主要顧客である小企業・零細企業です。
私共の会員事務所様では平均月額8万円というMASのフィーを獲得しておられます。
その金額から考えると意外かもしれませんが、会員事務所様のMAS受注先企業層は、社員数5人~9人が一番多く、次いで社員数10人~19人の層です。

MASの定義ピラミッド

その層の企業は、きちんとした経営計画もなく目標管理が出来ていない事が多く、結果として機会損失が発生し経営に苦しんでいます。そのような企業に、「計画」「実施」「見直し」という経営管理の基本の仕組みを提供し「定着」して頂くと機会損失が低減します。

また会計事務所の強みは「会計データを見る事ができ、その内容を読めること」です。この強みをフルに活用して、小企業に経営管理サイクルを定着させ機会損失を無くす事が可能です。

これらから私どもはMASを「小さな会社の経営管理コンサルティング」と定義しています。

会計・財務に限定したコンサルティングの価値と限界

会計事務所がイメージするMASのイメージは、

●財務分析をし、財務計画を立案し、毎月財務モニタリングを行うというサービス

ではないでしょうか?
もちろん、そのような会計・財務を中心としたサービスも大変価値のあるものだと思いますし、会計・財務を意識して経営する社長が増えれば機会損失も減ってくると思います。

しかし、財務と現場改善のイメージがつながらない経営者も多く、なかなか成果が創出できないとか、有料サービスとして継続できないといった問題が発生するとお聞きします。
感覚的ですが、財務計画とモニタリングの範囲で十分な成果を創出できる経営者はサービス提供をした方の2割程度ではないかと思います。
もちろん、会計・財務から問題をひも解くのは当然重要ですが、

●財務数値と「現場改善のつながりをひも解ける」サービス

を提供するとMASの市場も広がってきます。

会計という強みをフル活用し現場の課題に迫る

より多くの企業に成果を提供できるMASを展開するには、財務をベースに現場の問題をひも解き、経営者の行動革新につながるサービスを提供する必要があります。

(1)経営現場の行動革新につながる財務分析の深掘りとは

医者は、問診・検温・触診などの初期診断で疾病の仮説を立て、レントゲン・血液検査、更には細胞検査等の診断を多段階に実施して、疾病を特定します。そして疾病が特定できてから処置を考えます。
決算書は大きな問題個所を発見するための言わばレントゲンであり、それだけでは「原因究明」と「処置」まで考えることは出来ません。しかし、会計事務所はに会計データが見られるという他にない強みがあり、詳細検査を行うための技術があります。
それは「内訳明細作成技術」や「管理会計技術」です。

財務分析で、改善すべき勘定科目が特定できれば、その科目の内訳明細を作る事で問題の詳細に迫る事が可能です。
例えば社長に「材料費を1%コストダウンできないか?」というより、「A社から仕入れているBという材料を5%削減できる方法はないか?」と問いかけた方がより具体的な改善策が浮かぶ可能性が高まります。

また、例えば管理会計の技術を活かし、「顧客別限界利益」や「商品別限界利益」を明らかにして、「どの顧客にどの商品を売る事に注力すると効率的に限界利益を増やせるか?」を問いかける事も可能です。

このように財務分析から改善すべき勘定科目を特定し更にデータを深掘りして、経営者に改善を考える機会と環境を提供すれば経営者の思考が深まります。

(2)財務と経営現場で起きている現象を繋げる

更に、会計データから経営現場の問題点を考察するようにリードする事も必要です。 例えば、「外注費比率が高い」という場合、

①見積もり・受注の単価が低いのか?
②内製工程がオーバーフローして外注がでているのか?
③外注単価が高いのか?

などの原因系を問いかける必要があります。その原因系により対策が異なるからです。
このように会計データと現場で起きている現象との整合性を読み、行動レベル・意思決定レベルの問題を特定して、改善を考えてもらうのがMAS担当者の役割です。
この事により、財務を改善するためのテーマとアクションが明確になり成果創出がやりやすくなってきます。
とは言え、会計データを扱う会計事務所で、経営現場にある原因系のひも解き方(何を問いかければよいか)をすぐにマスターするのは難しいと思います。

簡便に現場の原因系を問いかけるツールとして「キャッシュフロー改善ツリー」を用意しております。
ご関心のある方は関連記事をご覧下さい。

会計という強みをフル活用し現場の課題に迫る

会計事務所様から「経営改善の具体的アドバイスができない」という話をお聞きしますが私どもは「具体的アドバイスは重要ではない」と考えています。それができるに越したことはありませんが、それには長い年月と経験を要します。
それよりもMASでは、組織が持つ最大限のパフォーマンスを「引き出すための技術」の方が重要であると考えており、弊社の会員事務所様でもその技術により多くの経営改善成果を創出しています。

そもそも中小企業には機会損失が多く、本来持つ能力が発揮できていませんので、その可能性を引き出す外部専門家はとても価値のあるものとして行け入れられます。
MASで価値ある外部専門家として受け入れられるためには3つの重要な要素があります。

●経営者の夢・目標の為に行う
●重要な経営課題を共有する
●正しい聴き方で組織に気づきと行動変容を促す

   

詳しく見ていきましょう。

(1)経営者の夢・目標の為に行う

会計事務所は経営改善を促す際に、数値上の問題点を指摘することが多いようです。しかし、指摘は対立した関係を生み、経営者の納得や自発性が生まれにくくなってしまいます。
一方、経営者に夢や目標やありたい姿、そしてご自身の問題意識を聴くと自発的に発言するようになります。MASの第1歩は、この経営者の夢・目標を傾聴し、共感することだと私共は考えます。

その夢・目標を実現する為の会合がMAS会議であるという認識に立てば、経営者と会計事務所が「同じ方向に向かって話し合う関係性と環境」ができます。指摘による対立ではなく、「夢・目標に照らして何が問題か」を同じ方向を向いて話し合う事がMASのスタートです。

(2)重要な経営課題を共有する

中小企業が経営改善を考えるとき、多くのテーマに同時に取り組むのは難しいものです。
従って、経営者の夢・目標に照らして、何が一番問題かを話し合い、「重要課題を特定」して「経営者と共有」する事が大事です。

その為には、財務的側面からの課題、経営機能的側面や経営環境の側面からの課題などを抽出しし「重要な経営課題を特定・共有」するステップが重要となります。

(3)正しい聴き方で組織に気づきと行動変容を促す

経営者の行動変容は、「自らの気付き」から生まれます。指摘や改善策提案はあまり効果を生みません。それよりも「正しい聴き方」「良い質問」で気付きを与える事が重要です。

例えば、「外注費が高い要因は何が考えられますか?」「その要因を改善するには、どんな方法がありますか?」「それはいつから実行できますか?」「どなたが担当しますか?」「どの位改善できそうですか?」など、会計から仮説を立て、正しい聴き方で経営者自らが考えてもらう環境を提供し、社長や組織の持つ能力・パフォーマンスを最大限引き出します。従って、MAS担当者はこの傾聴の技術をマスターする事が極めて重要です。

MAS担当者の役割

これまでの内容を踏まえ、MAS担当者の重要な役割や経営支援に向かう姿勢についてまとめておきます。それは大きく3つあります。

●視点を与える
●傾聴する
●算盤をはじく
●これらを通じて「立ち止まって考える機会」を提供する

(1)視点を与える

問題発見やその解決を考える切り口を提供し、考えてもらいます。
財務分析はもちろん、その詳細把握のために必要なデータのとり方、問題の整理・分類のためのフレーム、解決策を考えるためのロジックなどを使いこなし、「社長の気づき」や「改善アイデアの抽出」をサポートします。

(2)傾聴する

改善テーマや解決のアイデアについては、社長の考えを良く聴き、ご自身の思考を整理していくサポートが重要です。傾聴する事により社長の考えがまとまっていく事が重要です。
その際、財務への影響を視野に聴き、的確に質問を行うことによって、財務改善効果を類推しながら意思決定の支援をしていく事になります。

(3)算盤をはじく

社長が戦略や経営改善のためのアイデアや行動が明確に出来たら、実際に着手する前に意思決定の為の財務のシミュレーションを行います。シミュレーションの結果が好ましくなければ、再度検討を行い、最終的に実行に移すための意思決定をサポートします。

(4)これらを通じて、「立ち止まって考える機会」を提供する

経営の構想は実際に実行してみないと成果検証は出来ません。
しかし、実行した結果を評価しそれを是正し、粘り強く改善していけば成果が出てくるものです。常に走り続けている経営者に、MAS担当者と共に考えるという場を提供することにより、好ましいPDCAサイクルを定着してもらいます。

経営者の良きパートナーとして、「組織が持つ力を最大限に発揮できる環境を提供すること」がMAS担当者の重要な役割です。

最後に

会計事務所がMASを提供するうえで最もハードルとなるのが、財務から「現場の問題をひもとき、改善を考えて頂く視点」でしょう。
このサイトVAⅬUESでは、その手法について可能な限り公開しております。

財務と現場をつなぐキャッシュフロー改善ツリーで概要をイメージして頂いたり、 勘定科目別のひも解き方のコンテンツでご研究頂ければ幸いです。