顧問先からのMAS受注

多くの顧問先企業を抱える会計事務所が、MASの好ましい対象企業に正しい提案手法で提案すれば、受注と成果創出の両方が実現できます。ここではMAS受注のターゲット選定と提案のフロー及びその概要についてお伝えします。この内容は新規見込客との商談にも使えるものです。
MAS事業のスタートアップ段階の営業活動最適化のために是非お読み下さい。


初期段階のMAS営業の成功ポイント

(1)成果を出しやすい企業に提案する

MAS事業の初期段階の成功要因は、「MAS契約した企業の成果を創出すること」です。 その理由は次の通りです。

●成果創出が会計事務所のMASに対する「自信」になる
●成果創出した企業からの「口コミ・紹介による新規拡大」にもつながる。

従って、初期段階のMAS営業は「成果を出しやすい企業を選ぶ」事が重要です。

「苦しい企業の経営支援をするのがMASでは?」という声も聞こえてきそうですね。
それはある程度MASの力量がついてから着手する対象として考えた方が良いと思います。業績が過度に悪い企業では、資金繰り対応が指導の中心になり、場合によってはリスケやBKミーティングの同席など工数が膨らみ、かつなかなか成果創出が難しいものです。

もちろん、そのような企業を放置するという事ではありません。

●成果創出しやすい企業で実績を出し
●早く苦しい企業の支援ができるようになって頂きたい

という意味です。
成果を出しやすい企業とは次のような企業の事です。

①経営者の意欲・問題意識が高い

MASは経営者のありたい姿を実現するためのサービスですから、意欲や問題意識が低い企業には その価値を感じて頂きにくいものです。意欲・問題意識が高ければ現状とのGAPに関心が高く、その 解決に向けたサポーターを欲します。

②経営者が、素直で行動力がある

企業の改善成果を出せるのは経営者であり、MASを提供する会計事務所はそのサポ ートをする役割です。従って経営者が行動を起こさない限り成果は生まれません。
素直で、気づけば行動するタイプの経営者を選ぶのが大事です。

③過度に財務状況が悪くない

少しくらいの赤字や債務超過は大丈夫ですが、営業キャッシュフローを大きく上回る借入返済があったりすると、 改善の成果がキャッシュフロー改善につながりにくく、資金繰り・資金調達・リスケなどの対応が必要になりがちです。
このような企業は力量がついてから取り組むのが妥当です。


(2)複数の企業に提案する

初期段階で、高確率なMAS受注をするのは難しいものです。営業のトレーニングのようなお気持ちで「最低3社、できれば5社リスティング」して計画的に提案して頂きたいと思います。

以下にご説明するMASの営業手法は企業のための「プレ・MAS(経営診断と課題形成)」を伴う誠実なものです。言わば経営改善の方向をご一緒に考えるものですから、そのような提案であれば、受注できなくても経営者の心情を害する事はありません。

MAS受注ができる3つの条件 ~自信・共感・工数~

MAS受注が実現するには、3つの条件が必要です。

●MAS担当者に成果創出の「自信」が持たれている事
●経営者の「共感」を得ている事
●MAS担当者に成果創出の為の「工数」がイメージされる事

(1)MAS担当者に成果創出の「自信」が持たれている事

MAS担当者が成果創出の自信を持つには、その企業の「経営診断」をし、「成果を創出できるイメージを持つ」しかありません。その活動は、MAS受注後の初期段階の活動の簡易版と言っていいでしょう。
財務を読み、経営に関するヒアリングをし、課題形成をするといった「プレ・MAS」によって「自信」が生まれます。

「課題形成」とは、対象企業の収益性やキャッシュフロー改善のツボや改善の方向性が見えている事を指します。
財務分析と的確な経営ヒアリングができると次のようなイメージが出来てきます。

例)製造業A社の課題形成
 ・特注品の利益率向上と運転資金差の改善がCF改善の鍵である
 ・特注品は単価が取れるにも関わらず見積もりがあまいようである
  ☞積算基準を見直し、きちんとした見積もりをすれば利益率は上がる
 ・運転資金差は、仕入先B社の支払いサイトが交渉できるようである
 ・この2点で利益額○○万円と運転資金差△△万円の改善が期待できる

このようなレベルで、経営改善の方向性をイメージして提案するという事です。

また、そのような誠実な活動を踏まえた提案であれば、仮に契約できなくても経営者は感謝してくれますから顧問先には適した手法です。

(2)経営者の「共感」を得ている事

経営者の共感を得るには、その課題形成の過程を「共に考えながら進める」と良いでしょう。経営者とともに、次のようなスタンスで一緒に考えます。

●財務分析を行い、その原因を一緒に考える
●経営活動の問題点を一緒に考える
●何から改善すべきかという「課題形成」をし、対策イメージを共有する

このようなプロセスを踏めば経営者の共感が生まれやすいものです。
指摘ではなく、共に考える姿勢で臨むのがポイントです。

(3)MAS担当者に成果創出の為の「工数」がイメージされる事

工数積算とは、どんな支援をどの位の時間をかけて行うかを明らかにする事です。
その事で、提案金額に根拠が生まれ「提案金額に自信」を持つ事ができます。
例えば、次のようなイメージです。

(3)MAS担当者に成果創出の為の「工数」がイメージされる事

例)製造業A社の指導工数の積算
 ・指導段階では全科目の詳細な考察が必要:6時間
 ・社長にもっと詳しく財務の要因をヒアリングする:3時間
 ・工場見学:2時間×2回=4時間
 ・ヒアリング内容をもとに、単年度計画を作る:4時間
  ☞特注品の利益率向上と運転資金差の改善の活動を織り込む
 ・社員さんへの計画発表立会:2時間
  ☞テーマの役割をキチンと認識してもらう
 ・数値と施策のモニタリング:2時間×8回=16時間
 ・50時間×@15千円=75万円 (月6万3千円)

MAS受注のためのフローと概要

MAS受注ができる3つの条件(自信・共感・工数)を満たす、フローは以下の通りです。

●財務面の課題を事前に考察する
●夢・目標と問題意識を共有し、財務&経営ヒアリングを行い提案アポイントを頂く
●MASの効果効用を考える
●MASに必要な工数と金額を積算する

この準備の後、提案書をまとめ、提案する事になります。

(1)財務面の課題を事前に考察する

顧問先との面談前に財務分析からの重要な着目点を明らかにします。財務面の課題を経営者と話し合う論点をある程度絞っておく準備です。

下記の「財務改善の方向性」というフォーマットは、縦軸にキャッシュフローの構成要素である営業キャッシュフロー(売上・変動費・固定費・運転資金差)、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローという項目をとり、横軸に仮説、経営者ヒアリング、財務改善のポイントを取っています。

この中の仮説(科目名・数値・問題点)の欄にポイントをメモする程度の準備をすれば十分です。経営者ヒアリング、財務改善のポイントの欄は経営者との面談の際にご一緒に考えて埋めていく感覚で会話をする事により、「経営者がご自身で考える」ように誘導して下さい。

財務改善の方向性 (2)ヒアリング面談をし、提案アポイントを頂く

経営者との面談の際には、①夢・目標と問題意識のヒアリング②財務ヒアリング③提案アポイントのフローで進める事をお勧めします。財務から入るより、経営者の夢・目標や問題意識を先に話し合う方が面談がスムースに進む傾向にあります。また面談後には速やかに面談結果の整理と提案準備をして下さい。以下にその概要をご紹介します。

①夢・目標と問題意識のヒアリング

経営者の、思いや問題意識をヒアリングします。
まず、経営者の「経営理念、思い」や「ビジョン・ありたい姿」についてです。頑張って経営している理由や経営に関する思い、今後の目標像など経営者に感情移入してよく傾聴して下さい。必ずしも崇高な理念やビジョンでなくても結構です。経営者の今の思いが共有できれば結構です。

次いで「経営機能別の問題意識」を聞きます。 経営機能とは次のような財務という結果を生み出す経営の要素を指します。

●商品開発、生産・物流、営業、人事、財務、後継者 など

これらの経営機能の各項目について問題意識やありたい姿を傾聴して下さい。

●現状・問題点・ありたい姿・対策イメージ(社長の構想)

※無料会員登録をして頂き、MAS担当者養成講座「顧問先からのMAS受注」を試聴頂くと、この経営ヒアリングのフォーマットと記入事例がご覧頂けます。

②財務面のヒアリング

次に、用意した「財務改善の方向性」のフォーマットを使い、経営者と財務面の検討をして下さい。キャッシュフローの構成要素ごとに「経営者の見解」をヒアリングし「経営者ヒアリング」欄にメモをしていくようなイメージです。
ヒアリングが終われば、「財務改善のポイント・優先度」の欄について経営者と話し合い、改善の優先度を決めていきます。

財務改善の方向性2 ③提案アポイント

このようなヒアリングスタイルで経営者と問題意識を「共同作業で共有」して、経営の支援者としてのポジションと共感を獲得したら、必ず「提案のアポイント」を頂いて面談を終えて下さい。提案のアポイントは、面談日から1週間程度の期間が妥当です。
問題意識と共感が冷めないうちに提案しましょう。

(3)提案書を作成する ①MASの効果効用を考える

夢・目標、問題意識のヒアリングと、財務ヒアリングで、社長と問題意識を共有したら、MASによってそれらをどのように解決できるかを考えます。提案時に訴求すべき「MASの効果効用」言い換えると「MAS契約の動機」を作りこむ作業です。
「収益性改善が確実に進む」といった効果効用以外にも「後継者が育つ」とか「組織で目標と施策を共有できて経営改善の推進力が増す」など色々な効果効用があります。
提案先企業にとって「MASに取り組む価値」を固有の表現で提案内容を考えてみて下さい。

②MASに必要な工数と金額を積算する

MASの効果効用が見えたら、その実現に向けた業務内容を工数を見積もり、時間単価を掛けて、MASの見積もり金額を算出します。
「現状分析」「改善策の起案」「計画策定」「モニタリング会議」など項目ごとにどの程度の工数が必要かを見積もります。
時間チャージは2万円を目標に、少なくとも1.5万円を目処に積算して下さい。

③提案書の作成

これまでの検討事項を提案書にまとめます。
「夢・目標、問題意識ヒアリング」「財務ヒアリング」「MASの効果効用」「MASの工数積算」などの情報を整理して提案書に反映します。
提案書の構成は、「表紙」「はじめに」「社長様の思い」「社長様の問題意識」「財務面の考察」「課題と解決のご提案(MASの効果効用)」「支援テーマとスケジュール」「費用のお見積り」といった内容が適切です。

※無料会員登録をして頂き、MAS担当者養成講座「顧問先からのMAS受注」を試聴頂くと、提案書のひな型と記入事例がご覧頂けます。

(4)提案会

提案会は下記のようなフローが適切です。
基本的に「2時間」程度のアポイントが必要とお考え下さい。

【提案会のフロー】
・アイスブレーキング
 :前回の面談を話題に出し、その時の気持ちを思い起こしてもらう
・提案
 :提案書の内容を経営者の理解・納得を得ながらお伝えする
・質疑応答
 :提案内容の疑問点や要望事項をヒアリングする
・クロージング
 :契約書を提示して契約を迫る
 :ハードル(金銭面・時期・幹部の説得など)を把握して対応方法を提案する

提案書ができたら、所内のどなたかに社長役になってもらい「ロールプレイング」したり、ご自身の提案を録音して改善点を修正するなど、事前のトレーニングをして訪問するのが望ましいと思います。

まとめ

このようにMASの提案活動は指導の初期段階に行う「経営診断の簡易版」です。
それは大切な顧問先の経営をより良くするための活動であると言ってもいいでしょう。
MAS受注が取れる取れないにかかわらず、積極的に「営業=経営診断の簡易版」を顧問先に提案しましょう。多くの場合、経営者の感謝の言葉が聞けると思います。
新規見込客との商談においてもこの方法は大変有効で高確率でMAS契約が実現します。

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また、MAS事業に成功しておられる会計事務所様の事例をお読み頂くとヒアリング型の営業と指導の効果を、よりイメージして頂けます。是非一度、ご研究下さい。